相続発生前に遺産の請求権を放棄し、相続財産を残された親に戻す誓約に法的拘束力はあるでしょうか?
先頃、亡母の遺産分割協議を行ない、私と妹が、父の老後の面倒をみるという条件で、当該遺産を分割することになりました。
その上で、もしも私、または妹が父より先に死亡した場合は、それぞれの配偶者は、このたび相続した遺産の分に対しての請求権を放棄し、父に当該遺産が戻るようはからう、という誓約をし、相続人に加え、私・妹それぞれの配偶者を合わせた5人全員で、その旨を記した覚え書きに署名と捺印をするつもりでいます。
そこで質問ですが、こうした覚え書きには、法的な拘束力があるでしょうか。
つまり、それぞれの配偶者が、いざその時になって、正式な裁判にうったえ出て、自分の法的な取り分を主張した場合に、この覚え書きが有効な抑止力たりえるかどうかをお訊ねしたいのです。
なお、妹は日本国籍ですが、妹の配偶者はドイツ国籍です。夫婦間に子供はありません。
もう1つ、もし覚え書きではそうした抑止力が無いという場合、遺産分割協議書の方に、上記のような内容の付帯事項を記載しておくことは有効でしょうか。
(質問no.449 12.04/17 お名前:三浦さん 東京都 遺言・相続カテゴリ)
当サイトからの回答
法的拘束力はありません。
三浦さん、はじめまして。無料法律相談ネット・サイト管理人の北条たかとと申します。
>こうした覚え書きには、法的な拘束力があるでしょうか。
残念ですがありません。
このような趣旨の覚書に拘束力があるか否かではなく、そもそも民法では、相続が発生する前に推定相続人(相続人になる予定の人)に対して相続分の放棄をさせる事が禁止されているのです。
少し細かく説明しますと、今回のお母様の分の相続に関しては、三浦さんの配偶者と妹さんの配偶者は相続する権利を有していませんので、法律上何の関係もありません。
今回の相続の相続人は配偶者である父、嫡出子である三浦さん、妹さん、の3人のみです。
その後、仮に美浦さんの妹さんが亡くなられた場合には、彼女の配偶者としてドイツ人夫が初めて相続権を有するのです。
その相続権を事前に放棄させる事は法律上できない規定になっているという事です。
>それぞれの配偶者は、このたび相続した遺産の分に対しての
既述の通り、法律上、配偶者達は相続はしていないのです。相続したのは三浦さんと妹さんで、現実的には利益を得ているように見えますが、法律上は違います。
>それぞれの配偶者が、いざその時になって、正式な裁判にうったえ出て、自分の法的な取り分を主張した場合
>に、この覚え書きが有効な抑止力たりえるかどうか
抑止力にはなりえません。無効という扱いになります。
>遺産分割協議書の方に、上記のような内容の付帯事項を記載しておくことは有効でしょうか。
「上記のような付帯事項」というのが何を指しているのか分かりませんが、いずれにせよ、どのような形であっても相続が発生する前の段階で相続放棄はできませんし、させる事もできません。
因みに、三浦さんや妹さんの死後、配偶者に今回の財産分を相続させたくないのであれば、今回の相続に使った財産目録を参考にし、該当する財産分だけお父さんに遺贈させるよう、遺言書を用意しておくと良いでしょう。
回答者 : サイト管理人 北条たかと この回答者の詳細はこちらをクリック