賃貸契約している居酒屋に契約更新をしない旨連絡したら立退き料を請求されました。納得がいきません。




母が、実姉から(私にとっては、伯母)相続で譲り受けたアパートの 賃貸契約についての質問です。

アパートの1階に居酒屋として、以前より 賃貸契約を結んでいる店があり、その借主とのトラブルになっております。

経緯

H21・3月 3年の契約の更新。(伯母と借主にて)ただし 賃貸契約書はなし。)
H22・8月 伯母死亡(母名義に)
H23・5月 (契約の残り10ヶ月前に、)契約の更新をしない旨を書面で交付。
H24・3月 契約満了。
3月以降も 家賃は、口座振込にて入金。(入金をとめる手続きは、できないと金融機関より回答あり。)

先日、話し合いに行くと『移転費用がかかるので、まだ越せない。 家賃は入金している。移転費用を少し出してくれないか(家賃の6か月分+敷金)』と母に言ったそうです。

契約終了の後に、移転費用を請求することはできるのでしょうか?

母は、出ていってくれるのなら、払ってもいいという様子なのですが、納得がいきません。

(質問no.535 12.06/03 お名前:みずきさん 埼玉県)




基本的には支払う傾向にあります。

みずきさん、はじめまして。無料法律相談ネット・サイト管理人の北条たかとと申します。

移転費用を請求することはできるのでしょうか?

できます。いわゆる「立退き料」と呼ばれるものです。

法律制度上、賃貸人から賃借人へ対して解約申し入れを行い、賃貸物件を明け渡してもらう際には正当事由に加えて立ち退き費用の支払いが必要と考えられています。(立ち退き費用は正当事由を補完するものとして考えられています)

(契約の残り10ヶ月前に、)契約の更新をしない旨を書面で交付

既述の通り、賃貸人からの賃貸物件の解約申し入れには正当事由が必要であり、かつ、原則として期間満了の6ヶ月前までに賃借人に対して解約の申し入れをしなければならないのですが、気をつけなければいけないポイントとしては、それを守れば立退き料の支払いが必要無いという訳ではないと言う点です。

契約の更新をしない旨を書面で交付。

アパートの1階に居酒屋として、以前より 賃貸契約を結んでいる店

尚、正当事由とは、賃借人がどのような事情でその土地を必要としているのか、今までのその土地建物の利用状況はどうであったか等を中心に個別に判断されます。

そして、立退き料の支払いを考慮しても賃貸人側に契約の更新をしない正当な理由が認められるかどうかで判断します。

この点、賃借人は商売をしており、利用状況としては賃借人側に分があると言わざるを得ません。

類似の判例では「飲食店が入居していたビルが老朽化による立て替えの為に契約を更新しない旨通知した事例で、正当事由を認めつつも、店舗での営業継続の必要性は賃借人の経営上、甚だ大きいものと認められ、双方の事情を比較すると、賃借人にとって店舗の明渡しは経営に深刻な事態をもたらす事が予測されるものであり、賃借人が店舗を確保する必要性は賃貸人が明渡しを求める利益を凌駕する」としています。

勿論、判例は個々の事例に対する個別的判断ですので、判例がこうだから今回も必ずこうなるという事ではありませんが、参考にはなると考えます。

移転費用を少し出してくれないか(家賃の6か月分+敷金)』

立退き料に関する基準もまちまちで、大体家賃6か月分~9か月分程度ですので、要求としては妥当な範囲内でしょうが、敷金返還は契約の問題ですから、それは別に処理する必要があるでしょう。

納得がいきません。

納得がいかない場合は調停で話し合い、それでも話がまとまらない場合は訴訟による決着となるでしょう。